『ジャッカー』~You shook me all night long!

原題:COHEN AND TATE

1988年 86分 アメリカ/監督,脚本:エリック・レッド/出演:ロイ・シャイダー アダム・ボールドウィン ハーレイ・クロス/引用画像:チラシ(蒐集品)

□9歳のトラヴィス(ハーレイ・クロス)はマフィアによる犯罪を目撃したため隠れていたが、場所を知られて二人組の殺し屋が来てしまう。殺し屋のコーエン(ロイ・シャイダー)とテイト(アダム・ボールドウィン)はFBIと両親を撃ち殺すと、トラヴィスをクルマに乗せて誘拐した。彼はいまから570キロ先のヒューストンへ送られ、マフィアの厳しい尋問を受けるのだ。少年は絶望して泣いていたが、そこへパパが一命を取りとめたというニュースが流れてくる。逃げる勇気がわいたトラヴィスは、自分たちのミスに焦り始めた殺し屋を相手に心理戦をしかけて動揺させていく。

■三人の人物がクルマの中でいがみ合っているだけのB級サスペンスなんです。脚本はシンプルで大きな展開はなく、映像が凝っているわけでもありません。でもこれね、すごく面白いんですよ。途中でだれることもなく最後まで作品の中にぐっと引き込まれっぱなしになります。この面白さの理由って、三人の役者にあるんですよね。ロイ・シャイダーを筆頭に、アダム・ボールドウィンも子役のハーレイ・クロスも、役にビタっとハマりきっている。彼らがほんとに見事な調和を見せていて、B級と呼ぶのが申し訳ないくらいに充実した演技空間を醸成しています。どのキャラクターもイキイキと活きておりますよ。

※この先、結末にふれております

■まずはやはり、シャイダー演ずるコーエンがいいですね。ベテランなんだけど老いて組織から腕を信じてもらえなくなって、チンピラの若造と無理やり組まされてしまったという設定。そういうことから自尊心を傷つけられて、テイトのことも嫌いでしかたがない。このコーエン、一応は冷酷なんですが、シャイダーが持っている頼もしさや真面目な個性によって嫌悪感が薄れ、とても魅力的な人物像になっておりますよ。『ブルーサンダー』や『2010年』と比べても、役者として魅せてくれるのは絶対にこちらのほうです。補聴器がなければどうにもならない、くたびれかけた爺さんの奮闘に哀愁が漂う瞬間もありましてね。そしてテイト。雇い主との契約を最優先とするプロフェッショナルなコーエンにたいし、これはどうにかしてトラヴィスを殺してやろうと機会をうかがっている血に飢えた異常者。それをボールドウィンがおかしな目つきで熱演していて、すごく気持ちがわるい。テイトがいら立ちまぎれに箱のマッチをザラザラとほお張り、ペキペキいわせながら噛み砕くきちがいアピールも強烈すぎます。で、トラヴィスはこの仲たがいを利用して計画を破たんさせようと策を練っていくわけですが、これも、演じるハーレイ・クロスくんが自然な演技で上手いんですよね。後部座席から二人の大人をじっと観察する値踏みの眼差しのずる賢いところなんか、とてもいい感じです。ストレスで爆発寸前のテイトに向かって「プッシー!」と罵(ののし)って挑発する憎たらしさも絶品で笑ってしまいます。それで、このガキね、事前に「テイトは絶対にボクたちを殺す気だよ。だから、その前に殺してよ」などと、コーエンをそそのかしている怖いやつでしてね。これって、探偵ものに出てくる悪い女のやり方ですが、それを少年にさせているところがまたエリック・レッドっぽいなと思いました。

■レッドの作る話は『ヒッチャー』にしても『ブルースチール』にしても、倒錯の気配が隠し味で、本作においても少年の描かれ方は、やはりちょっと異質だと感じます。ラスト近くでは、トラヴィスは銃を眉間に押しつけられてもコーエンをじっと見つめて、「あんたは撃たないよ。ボク、わかってるもん」なんて静かにいったりしますからね。この奇妙な関係というか、つながりというか、それに血だとか、殺しだとか、そういうものを9歳の少年が平然と受け入れて大人と渡り合っているさまがアブノーマルなわけでして。普通は女性が演じるようなキャラクターを可愛い顔の少年に振っている、そのあやしさが面白いんですよね。倒錯性の大先輩であるイーストウッドも『パーフェクト・ワールド』を撮りましたし、本作と二本立てにして比べてみると楽しそうです。

枯れたロイ・シャイダー ★★★★★

作品の出来       ★★★★☆

 

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