『チェンジリング』~機会があるならばぜひ観ておいた方がいい、心霊ドラマの秀作

原題:THE CHANGELING

1979年 107分 カナダ/監督:ピーター・メダック/出演:ジョージ・C・スコット/引用画像:パンフレット,チラシ(蒐集品)

□作曲家のジョン(ジョージ・C・スコット)は妻と娘を事故で亡くし悲しみに暮れていたが、なんとか立ち直りたいという思いもあって仕事に復帰する。新しい土地に移って古い屋敷を借りるとそれが縁で友人ができ、心の痛みも徐々に和らぎ始めていった。しかし、間もなくして、屋敷の中で奇妙な現象が起こり始める。朝6時になると何かを激しく叩くような怪音が鳴り響き、さらに浴槽に溜まった水には少年の幻影が見えるのだ。霊媒を招いて降霊会を開いたところ、ここにはジョンの悲しみに呼ばれるようにして現れた霊がおり、助けを求めているのだと説明される。そして、降霊会を録音した音声をジョンがあらためてチェックしてみると、そこには霊による言葉がはっきりと吹き込まれていた。霊の正体はジョゼフと名乗る幼い少年で、彼はかつてこの屋敷で悲惨な最期を遂げたのだという。ジョゼフの告白に大きなショックを受けたジョンは、その真相を探り始める。

■特撮や特殊メイクといったもので気を引こうとしていないため派手さはありませんが、かえってそれが質感を高めていてマルです。降霊会の場面では霊媒が鉛筆で殴り書きをして、ブリキの筒がカタカタと小刻みに揺れているだけなのに不気味な緊張がみなぎって、演出の良さが光ります。本作は奇をてらわず人間の描写も丁寧で、作風が整っておりますよ。ロケーションやインテリアといった美術の類いも良く、黒沢清監督がお好きな方なんかにも向いているのではないでしょうか。

※この先、ネタばれしております

■特別な作家性などは持ちませんが、悲しみや死者の無念をちゃんと描いて怪談ドラマとしての愉しみを与えてくれて、鑑賞の充実感があるんですよね。ジョージ・C・スコットの存在感も素晴らしくて、どの場面でも二重マルだと思います。自分がとくに好きなのは、ジョンが謎を解くため必死に駆けずり回っても、満足のいかないジョゼフがダダをこねるように激しいポルターガイスト現象を起こして、思わずジョンが怒りをあらわにする場面。ジョンは「こん畜生が! これ以上どうしろってんだ!」とののしって、予想される感傷を追い払ってしまうんです。この、スコットならではの屈強さというか精神の太さを感じさせる個性がカッコいいんですよね。主人公のキャラクター性がよく出ている場面でもあって、ここはとても面白いアクセントになっております。

■そして、もうひとつ印象的な場面がありましてね。それはジョゼフが  “ father,father,low well,ranch,sacred heart,my medal … ” と、自分が殺されて井戸に埋められていることを訴える場面なんですが、この一連の言葉の単調で弱々しい抑揚がまるでメロディのようになっていて、こちらの胸に悲しく沁みて響くんです。で、このメロディがエンドクレジットの音楽のサビになると、また、スウッと顔を出す仕掛けになっていて、ほんとに切ない気持にさせるんですよ。その部分になると “お父さん、お父さんが…助けて…” というジョゼフの痛々しい言い回しが心の中に思い出されてしまうわけです。そうやって映画の最後の最後まで感情が行き届いているので、鑑賞後もしばらく深みが残るんですよね……。という理由から、初めて鑑賞するときは吹替ではなく、必ず英語音声で視聴しましょう。

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