『トワイライトゾーン 超次元の体験』~不思議な物語が決して不思議ではなくなる世界

原題:TWILIGHT ZONE THE MOVIE

1983年 101分 アメリカ/監督:ジョン・ランディス スティーヴン・スピルバーグ ジョー・ダンテ ジョージ・ミラー/音楽:ジェリー・ゴールドスミス/引用画像:VHSジャケット(蒐集品)

■1959年から64年にかけてアメリカで放映されていたTVシリーズ『ミステリーゾーン』(以下MZ)を劇場用作品としてリメイクしたオムニバス映画。四つのエピソードをスピルバーグや『マッドマックス』のジョージ・ミラー、『ブルース・ブラザース』のジョン・ランディスなど、四人のスター監督がそれぞれに撮るという豪華さで話題となった。社会派風の持ち味が魅力のTV版と比べて映画版はヤワ過ぎたが、いま観ると気楽な作風や立派な特撮クリーチャーに80年代独特の味わいも出ていて、また別の種類の値打ちがある。

□プロローグ/監督,脚本:ジョン・ランディス/暗くなり始めた田舎道を走る一台の乗用車。ヒッチハイカー(ダン・エイクロイド)と運転者(アルバート・ブルックス)は懐かしいテレビ番組を当てるクイズから、『MZ』の話題となる。「あの番組、怖かったよな」「ほんと、最高だったね」と盛り上がるなか、ヒッチハイカーは茶目っ気たっぷりにいった。「ちょっとクルマを停めてくれよ。怖いもの見せてやるからさ」

■“TWILIGHT ZONE”を辞書で調べると“境界があいまいな領域”と出てくる。番組名としては、黄昏時のミステリアスな感じに空想と現実の間というニュアンスが掛かった、いいタイトルだと思う。ちなみに黄昏という日本語の語源は<誰そ彼>で、これは夕闇の中で見かけた人物が誰なのかが、はっきり見えずに判らないという状況をあらわしている。と、高校の古典の先生がいっていた。別の言葉では逢魔が時ともいうし、そんなことを思いながらこのプロローグを観ていると、ああそうか、アメリカでもそういうおっかない時間帯なんだ……と勝手に納得してしまう。

□第一話/監督,脚本:ジョン・ランディス/差別主義者のビル(ビック・モロー)はバーへ入ってくるなり友人に愚痴をこぼし始めた。あてにしていた昇進をユダヤ人の同僚に奪われたからだ。ビルはそのまま激高して、ユダヤ人や黒人なんかがアメリカで大手を振って暮らしているのが許せないとわめき散らす。隣の席の黒人客にたしなめられ、憤った勢いでバーの外に出ると、なぜかそこはナチス占領下のフランスだった。そして、彼は逃げ込んだアパートで女に叫ばれてしまう。「兵隊さん! ここにユダヤがいるわよ!!」

■他の三つのエピソードはTV版のストーリーを書き直したものだが、第一話だけはランディスが新たに書いたオリジナル作。とはいっても、じつはこれが一番『MZ』の代表者たるロッド・サーリングの説教臭さに近い。サーリングの作る話は憎しみやエゴを織り込むことが多かったが、本作はまさにその路線。レイシストのビルは時間や国を行ったり来たりしながら差別を受ける側の人種として扱われ、彼らが受けてきた迫害を、身をもって知ることになる。ランディス、心得ているなあ。良いプロットなので映画やTVシリーズとしてリメイクすれば人気が出そう。

ロッド・サーリングと番組への敬意 ★★★★★

□第二話/監督:スティーヴン・スピルバーグ/脚本:ジョージ・クレイトン・ジョンソン リチャード・マシスン ジョシュ・ローガン/サニーベイル老人ホーム。残りの人生を穏やかに過ごす老人たちの中で、ヘソ曲がりのコンロイだけはいつもいら立っていた。愛する息子から邪魔者扱いされているのが寂しいのだ。そんな所へ新入りのブルーム(スキャットマン・クローザース)がやって来る。ブルームは子供時代の話に花を咲かせる老人たちに大きな笑顔を見せながら、みずみずしい気持をもう一度取り戻してみたくはないかと問いかける。その夜、ブルームの誘いで部屋を抜け出し、子供のように缶蹴り遊びを始めた老人たちは……。

■TV版にあった『真夜中の遊戯』を書き直したもの。映画版では良くも悪くもこの時代のスピルバーグ色で、かなりの甘口。でも、そうは思っていても、観ているうちに毎回必ず涙腺が緩んできてしまうのよ。子役と老人たちの可愛らしい顔つき、スピルバーグのテクニック、そしてゴールドスミスの優しさが一体となって、泣くまで絶対に許してもらえないという憎らしい一編。キューブリックに殺されたハロランさんは、老人を見守る天使として生まれ変わりましたとさ。なんて思いたくなるようなクローザースの笑顔がとにかく素晴らしい。後ろ向きの人生観で終わるTV版『真夜中の遊戯』に比べて、映画版の方が健康的で好み。

クローザースの笑顔 ★★★★★

□第三話/監督:ジョー・ダンテ/脚本:リチャード・マシスン/元教師のヘレンは旅の途中の食堂でアンソニーという少年と知り合う。彼を家まで送ってやることになるが、なぜか家族は常にびくびくしていて、一緒に食事をよばれることになったヘレンもまったく落ち着かない。アンソニーに促されてウォルトおじさんが手品を披露すると、帽子から巨大なウサギの怪物が飛び出した。アンソニーは心に念じるだけでどんなことでも現実のものにできる超能力者なのだ。

■TV版の『子供の世界』を書き直したもの。『子供の世界』という回はシリーズの中ではちょっと異質で、本気でゾッとさせるホラーだった。映像としてそこを直接描写するわけではないが、癪(しゃく)にさわった犬や同じ年頃の子供、そして大人たちを次々と畑の下に埋めて殺してしまう超能力少年の話で怖すぎる。子供にたいして大人が盲目的にご機嫌うかがいすることの不健全さを風刺したような、印象に残る秀作だ。いや、でもまあ、誰もが嫌悪感を抱くそんな不気味な話は、そのまま映画にしてもヒットが遠のくだけだし。なので、映画版では子供のいら立ちをSFXまみれで描いた軽めの怪奇コミック編として、うまく改作してある。ここでは間抜け面のクリーチャーがガチャガチャと何体も登場したり、若いお姉さんがテレビマンガの世界に閉じ込められて怪物のエサにされてしまったりと派手な見せ場が多い。展開はつまらないが、そういうものを描くつもりは最初からなく、マンガ風の画作りがメインだ。『クリープショー』のお子様版といった感じ。

美術 ★★★★

□第四話/監督:ジョージ・ミラー/脚本:リチャード・マシスン/舞台は高度3万5千フィートの上空。極度の飛行機恐怖症であるバレンタイン(ジョン・リスゴー)はパニックに襲われ、激しく取り乱していた。機は暴風雨圏で揺れに揺れて、もう怖くて、怖くて仕方がない。頭がどうにかなりそうだ! ふと、窓の外に目をやると、翼の上に人がいるように見えた。「そんなバカな! あいつ、エンジンを壊しているじゃないか!」

■TV版にあった『2万フィートの戦慄』の書き直し。原作及びTV版と映画版の脚本、すべてマシスンの手によるもの。原作は読んだが、TV版は未だに観ていない。さて、このエピソード。錯乱して震えっぱなしの男に旅客機の運命が託されるというプロットがユニークだし、演出がスリルだけの一本調子ではなく、ユーモラスな面を持ち合わせている余裕も二重マル。そしてさらに、音楽による盛り上げ方も特筆すべき個所。鑑賞者は劇中のバレンタインと共にゴールドスミスにぎゅっとつかまれて、グルングルンに振り回されることとなる。窓に背を向けて目を閉じ自分の中から恐怖を追い払おうと必死になるバレンタインの神経をじわじわとよじ登っていくような音のサスペンスなど、ほんとに絶品。これは大きめの音量で楽しみたい。

エピソードの出来 ★★★★★

■まとめ。TVシリーズ『ミステリーゾーン』に思い入れがあってもなくても一応は楽しめるように作ってある映画で、冷静に評価をすると★★★☆くらいか。目玉になるのは第四話で、これは誰が観ても面白さを感じると思う。第一話はTVシリーズの雰囲気を再現しようとするのが主で、その地味な作風も含めて好きな人間にとっては懐かしさがマルだろう。第二次世界大戦の時代を登場させることで番組の記憶にさりげなく繋げていてうまい。第二話はあざといが、馴染みやすいセンチメンタルな内容で、第四話と共にこの映画の保険となっている。問題がありそうなのは第三話で、これはダンテの個性を理解していなければ「はあ?」となる可能性が大きい。ダンテのファニーな持ち味を堪能したい人向け。視覚的には凝って、80年代らしい贅沢をしている。ちなみにこの『トワイライトゾーン』、スピルバーグとランディスが中心になって進めていた企画だが、当初はそこにコッポラとポランスキーが加わる予定があったとのこと。それも観たかったなあ……。

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