『ラオ博士の7つの顔』~国内版VHSを観ての感想なんですけどね

原題:7 FACES OF DR. LAO

1964年 100分 アメリカ/監督:ジョージ・パル/脚本:チャールズ・ボーモント/出演:トニー・ランドール バーバラ・イーデン

□アメリカ西部のあるところにアバロンという小さな田舎町があった。住人が少なくて活気がなく、しかも水不足の問題もあって、ほとんどの者が町にたいする愛着心を失いかけているという状況だ。鉄道が延びてくる情報を密かにつかんでいた資本家のスタークはアバロンを買い上げようと提案し、住人もそれに乗り気で町を棄ててしまう気になっていた。そんな最中。中国人のまじない師・ラオ(トニー・ランドール)がサーカスを開催するためアバロンへとやって来る。奇妙なテントが組まれて、退屈しきっていた住人たちは大喜びでサーカスへと出かけるが、ラオ先生の出し物はどれもこれも変だった。そして、そのおかしなテントの中で、スタークや住人たちは心の中にいる自分の真の姿と向き合わされることになって……。

■日本では劇場未公開とのこと。これね、ファンタジーといってもぜんぜん子供向けではなく、しっかりと大人の鑑賞に値する作品なんです。脚本がSFドラマ『ミステリーゾーン』の主要ライターの一人だったチャールズ・ボーモントという小説家で、本作ではとにかくこの人の仕事ぶりがすごくいいんですよね。ラオ先生の言葉の深さが、ときに優しく、そしてときに厳しくほろ苦く、何度も何度もこちらの心に触れてくるんです。人間、大人になってしばらく経つと心の中に濁りが生じてしまうこともあるじゃないですか。で、そんな人がラオ先生のサーカスへ行くと、いまの自分の中にある濁りがハッキリと見えてしまうわけでしてね。そのサーカスは人間の心を映す鏡ということなんです。化け物や占い師に接して自分の本当の姿を目の前にした人たちは、忘れてしまっていた大切な気持ちを思い出していくんです……。やわらかですが、ファンタジーという型をうまく利用してお説教を自然に染み込ませるところは『ミステリーゾーン』にならっている感じもあり、誠意ある作風を好む鑑賞者にとっては間違いのない秀作だといえるでしょう。

■さて次に。この作品ではラオ先生役のトニー・ランドールが七変化で、魔術師マーリン、占い師アポロニアス、蛇女メデューサなどを演じ分けているんですが、そのどれもがイマジネーション豊かな仕上がりで、ひじょうに魅力的なんですね。なかではやはり主人公であるラオが際立っていて、手の親指からはマッチがわりの火が出るし、その他にも干上がった川からマスを釣り上げたり、夜空に小石を投げて花火を炸裂させたりして、とてもファンタスティックです。別のキャラが登場する度にわくわくしてしまうようなこの面白さは、特殊メイクがよくできているからという理由以上にランドールの達者な化け具合があってこそのもので、鑑賞を二回、三回と重ねても、まあ本当に感心させられますよ。あと、特撮の見所では巨大化したナマズ恐竜がモデル・アニメーションで暴走したりもするので、怪獣好きの方も一応は満足されるのではないでしょうか。ちゃんと人間をカプッとくわえてくれて芸も細かいですしね。ラオ先生によるこのナマズ恐竜の対処の方法がまたセンス・オブ・ワンダーというしかない感じで、楽しさに頬がゆるみます。

脚本と演出     ★★★★★

ランドールの七変化 ★★★★★

 

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