『プルシアンブルーの肖像』~なぜか名前を耳にしない、少女&怪奇の佳作ファンタジー

1986年 94分 日本/監督:多賀英典/出演:玉置浩二 高橋かおり

□夏休みの小学校。素直でおとなしい冬花(高橋かおり)をいじめる生徒や教師が、立ち入り禁止の旧校舎へ次々と誘い込まれて姿を消すという怪事件が起こる。事件には口のきけない用務員・秋人(玉置浩二)が関係しているようにもみえた。彼は15年前、想いを寄せていたカズミを旧校舎の時計塔から転落死させてしまった過去を持つ謎めいた人物だ。この事件はいじめられっこの冬花をいつも見守ってきた秋人による仕業なのだろうか?

■シンプルなジュブナイルものとしても、ロリータ系・怪奇ファンタジーとしても、わりと良い出来です。大林宜彦監督と同じ視線を感じさせる映画で、「ほら、これは少女だけが持っている世界ですよ。とても綺麗でしょう?」という、あのムードが強めに出ております。もともと大林監督をリスペクトしているのか、あるいは商売として手法を借りただけなのか、それはよく判りません。ですが、ただのモノマネには見えず、少女性にたいする“念”は結構本気のようにも思えます。中盤の、冬花と秋人が校舎の屋上で舞踏会ごっこをするという甘ったるい感傷を、こちらがどんな感覚でもって見るかで評価も変わるはずですが、地縛霊みたいな玉置さんと、とてもきゃしゃな高橋さんの取り合わせには儚さがあって、自分としては嫌いではありません。おっきなお友達の頭の中の妄想的風景というか、なんとなくその手の方々が抱きそうなロマンを察しているようにも見える図で、90年代になる手前まではこんなふうにユルめだったよなあとか、いま観るとそんな懐かしさを感じます。

■ビジュアル面でもしっかりしたものを目指していて、旧校舎のセットやクライマックスで玉置さんに施される特殊メイクなど、当時の水準でいえば充分に合格点でしょう。玉置さんはクラシック・モンスターの再来のようなキャラクターで雰囲気が出ていて、普段のメイクは簡単な目張りと無精ヒゲだけなのに、ちゃんと怪人に見えるんです。気絶した冬花を横抱きしながら古くて細い木造の階段をゆっくりと行く画なんかも、怪奇の夢があって二重マル。こういう美意識が映画の仕上がりに大きく影響するんですよね。で、秋人が言葉を話すのは最後の数秒間だけなんですが、それがまた玉置さんらしい独特の調子で発せられて、深みのあるフィニッシュになっておるんです。モンスター化した顔から一瞬で人間の顔に戻る描写も、単純な演出とはいえ印象に残ります。漫画のような構成でインパクトが優先され、つじつまも無視ではありますが、好事家ならばヴィンテージに近いサブカルものとして愉しめるのではないでしょうか。

玉置浩二の怪人ぶり ★★★★★

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