『クリープショー』~50年代のホラー漫画を実写で再現しようとする、凝ったオムニバス映画

原題:CREEPSHOW

1982年 120分 アメリカ/監督:ジョージ・A・ロメロ/脚本:スティーヴン・キング/特殊メイク:トム・サヴィーニ/出演:レスリー・ニールセン テッド・ダンソン ハル・ホルブルック スティーヴン・キング/大阪・梅田ピカデリーにて鑑賞/引用画像:チラシ,前売半券(蒐集品)

■本作はキングとロメロとの交流の中で生まれた企画で、50年代のホラー漫画を実写で再現しようと決定したのはキングの方だったらしい。キングのチープな嗜好をしっかりと把握しながらも、それがガラクタに見えないように演出で立派に肉づけしたロメロの手腕を大きく評価しておきたい。ただし、どのエピソードも人間の欲とか悪行とか、そういったエグみ自体を主眼として描いているので、ストーリーの面白さ、あるいは感心させてくれるようなオチを期待すると、これは全く違うということになる。

 

□プロローグ。ハロウィンの夜、ビリー少年がパパに怒鳴られている。ビリーがクリープショーという、とても残酷なホラー漫画に夢中になっているからだ。口答えをするとパパは平手でビリーを打ち、漫画を取り上げてゴミ箱に捨ててしまった。

■ビリーを演じているのはキングの息子さん。この少年、演技の勘があって不敵な表情など結構うまい。パパ役のトム・アトキンスはジョン・カーペンター監督の作品でよく見かけた顔。

 

□第1話『父の日』。独占欲の強い父親の支配に耐えて人生のすべてを捧げてきたベデリアだったが、ついに恋人の命までも奪われてしまった。たまりかねた彼女は思わず父親を殺害。それから数年後、罪悪感から墓前に花を供えにきたベデリア。と、そのとき、「父の日のケーキをくれんか!」と怒鳴りながら、土中から虫のわいた父が這い出してきた。

■殺された老人がなぜか蘇って、自分の遺産でのうのうと暮らしている親族を襲う。殺す方も殺される方もみんなイヤなやつ。骨肉の争いとはいうが、本作のリビング・デッドは肉ではなくてケーキを欲しがる。頭蓋骨に湿った土がつまって虫がウネウネしているクリーチャー・デザインが気色わるい。★★

 

□第2話『草まみれの男』。ある田舎の一軒家。ジョーディ(スティーヴン・キング)という独身青年が庭に出ていると、目の前に隕石が落ちてきた。彼は、これを売ればローンが払えると大喜び。隕石の熱をさまそうと水をかけたところ、二つに割れてしまった。そして中からは発光する不気味な液体が……。

■侵略ものSFの導入部分だけを映像化したようなエピソードで、人食いアメーバとか、ああいうB級クラシックのパターン。キングが間の抜けた田舎者を漫画の演技で的確にこなしていて上手い。家とその周囲が草でおおわれていくビジュアルも、ユーモアを含んでいて愉しい。ただし、最後のセリフにはキングが小説でみせる悲しさがあって、これが意外と印象に残る。★★★★☆

 

□第3話『みち潮』。ハリー(テッド・ダンソン)は知り合いであるリチャード(レスリー・ニールセン)から海岸に誘い出されて拳銃を向けられる。リチャードの妻、ベッキーを寝盗っていることがばれていたのだ。首から下を砂の中に埋められ、身動きのとれないハリー。目の前には波が迫り、そばに置かれたテレビ画面には同じ状態にされて溺れかけているベッキーの姿があった。

■リチャードの復讐方法はまともではないが、まあ、そうされても仕方ないだろうと思ってしまう。だって、ハリーもぜんぜん好青年には見えないから。これ、キングの短編<超高層ビルの恐怖>の別パターンみたいなもので、『キャッツ・アイ』ではこちらが映像化されている。★★★

 

□第4話『開封厳禁』。夜更けの大学。スタンリー教授は用務員と二人で謎の木箱を調べていた。だが、箱をこじ開けたそのとき、中にいた怪力のヒヒモドキが用務員を引っ張り込んで食べてしまう。逃げ出したスタンリーが、友人で恐妻家のヘンリー(ハル・ホルブルック)に相談したところ……。

■一番の目玉となるエピソードがこれ。ヒヒモドキの造形やら、スプラッタな流血シーンやら、派手めの見所がたくさんある。用務員が死にゆく描写がグッドで、机をたれ流れる血がコンセントに触れて、バチっと火花が飛んだりするのが細かい。★★★★

 

□第5話『クリープショー』。成功者のプラットは極度の潔癖症で、自慢のハイテク部屋から出ることもなく、害虫駆除にひたすら神経を尖らせる生活を送っていた。だが、そんなある夜、どこからともなく次々とゴキブリがわいて出て……。

■これ、潔癖気質の人間には強烈な嫌悪感を催させるはず。ゴキブリを足で踏むの? えっ、握りこぶしで潰すって? いや、そんなことしたらネチャッと出てきた中身がそこにくっつくわけでしょう? フードプロセッサーでかき混ぜられたとかいうシチュエーションにもオエッ! ★★

 

□エピローグ。漫画雑誌クリープショーの応募券を使って、呪いのブードゥー人形を手に入れたビリー。そして、その人形には、パパのTシャツの切れ端が巻きつけられていた。ビリーは長い針を手に取ると……。

■いじめっ子などにではなく、息子が自分の父親にたいして、自分の手で仕返しをして苦しめるという発想がゾッとする。最後までヘンな映画だ。

 

■全体としてのまとめ。悪趣味とか、安っぽさとか、そういったテイストを目指しているにもかかわらず、作品としての出来は立派で完成度も高い。モンスターが出し惜しみなく登場してその造形はどれも申し分ないし、凝った映像表現もイカす感じでグッド。ニールセンやホルブルックなどベテラン俳優の演技にも見応えがある。しかし、その一方で、サスペンスや恐怖を使ってこちらの感情をつかもうとはしない作風なので、ひとによっては退屈だと感じることもあるだろう。実際、アメリカでの封切時も当たらなかったとのこと。受け入れられやすい映画ではないと思うが、キングやロメロといった作家たちの濃ゆい個性をしっかりと感じることができる充実作であることは間違いない。

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