『暗闇にベルが鳴る』~恐怖のわいせつ電話! ねらわれた女子寮

原題:BLACK CHRISTMAS

1974年 98分 カナダ/監督:ボブ・クラーク/出演:オリヴィア・ハッセー マーゴット・キダー/引用画像:パンフレット(蒐集品)

□クリスマスのパーティで盛り上がる女子学生寮。また、あのいやらしい電話がかかってきた。つい最近も近所で暴行事件があったばかりだ。ジェス(オリヴィア・ハッセー)をはじめ、みんな気味悪がっている。気の強いバーブ(マーゴット・キダー)がやり返すと、電話魔は「殺してやるからな」といって切った。帰省の準備があったクレアはその場を離れて二階の自室へと戻るが、クローゼットに潜んでいた何者かに襲われる。そして殺人者はクレアの死体を寮の屋根裏部屋へと運び込んだ……。

■これはカルト系・恐怖サスペンスの逸品ですよ。画や音の作りがよくて、とてもクリーピィな雰囲気。とくに音が凝っておりましてね、まずはやっぱりわいせつ電話の主であるビリーの声なんです(本作の異常者のことを製作者たちはビリーと呼んでおります)。ビリーは電話で男女の声を使い分けて独り芝居みたいなことをするんですが、その凶暴で錯乱したやり取りを聞いていると悪意の固まりが耳から直接、神経にどばっと流れ込んでくるような気がしてたまりません。監督によればこの声は五人の男女が演じていて、それを混ぜたものらしいんです。テレビ吹替版の演技も下品でいいんですが、オリジナル音声のキチガイ感はまさに絶品。唸り声とか、ほんまにショッキング。あと、それに加えて効果音も秀逸でしてね。本作では鑑賞者の感情を誘導する音楽を控えめにして、かわりに心理的な効果として風の音を鳴らしております。冬の夜にびゅうびゅうと吹いて流れる冷たい風の音をはっきりしない小さな音量で鳴らすので、無意識の部分にぼんやりまとわりつくような不安を作り出すんですよ。誰も助けに来ない感じも強まって、うまいなと思います。もうひとつ、壊れたピアノのような不快なサウンド・エフェクトも印象的でマルです。これは調律用ピンにフォークやクシなんかをぶら下げて、ピアノの弦に触れさせ、エコーで処理した音とのこと。ジェスのボーイフレンドがピアニスト志望なので、そこへ結びつけようとしているんですね。という以上の理由から、本作はヘッドホンで音をしっかり捉えながらの鑑賞をオススメしたいわけです。

※次の段落からはラストの部分にふれております

■山城新伍さんの洋画劇場では「これはね、アメリカであった実話をもとにした映画らしいんです。アメリカって怖いところですね」と解説していたので、子供の頃はそれを信じていたんです。でも、後に都市伝説の本を読んだところ、本作が<ベビーシッターと二階の男>という有名な噂話をモチーフにした映画であると知りました。この噂話は製作当時にカナダやアメリカで流布していたもので、バイト中のベビーシッターが異常者からのしつこいイタ電を調べてもらったら、なんと電話はその家の二階からだったというオチでしてね。

■都市伝説というのは、話の細部は念入りなのに、関わった人物の顔がはっきりしない。敵意や毒気は濃ゆい輪郭線でもって伝わってくるけど、情報としてはすごくあいまい。そこが面白いんですよね。未解決事件もそうですが、解けない話はいつまでも興味を引くことになります。で、本作ではそういった都市伝説のミステリー性をそのまま移植させるために、あえて殺人者の正体を明かさずにラストとなるわけです。犯行に至った説明も何もないため、殺人者から人間のにおいがしません。そこに、おどろおどろしい余韻が残ります。ラストシーンは屋根裏部屋の窓からのぞくクレアの死体を見つめるカメラと、そして暗闇に鳴り続けるベルの鋭い金属音。エンド・クレジットが出てきてからもサスペンスが持続しておるんです。

■ジョン・カーペンターも怪談や都市伝説のテイストを好みますが、『ハロウィン』を作るにあたっては、本作を参考にしたんじゃないでしょうか。祭の日に現れて若者を殺し、夜の闇にまぎれて自由自在に姿を消す正体不明のブギーマン。この設定、似ていますよね?

キチガイ電話      ★★★★★

女学生たちの怖い死に顔 ★★★★★

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