『殺したい女』~わきの役者さんたちは笑わせてくれるんですけどね

原題:RUTHLESS PEOPLE

1986年 95分 アメリカ/監督:デヴィッド・ザッカー ジム・エイブラハムズ ジェリー・ザッカー/出演:ベット・ミドラー ダニー・デヴィート ヘレン・スレイター ジャッジ・ラインホルド/大阪・三番街シネマにて鑑賞/引用画像:チラシ(蒐集品)

□強欲なサム(ダニー・デヴィート)は財産目当てで社長の娘のバーバラ(ベット・ミドラー)と結婚。そして、義父がようやく他界したいま、サムは邪魔な女房を殺して遺産をすべてぶん捕り、あとは愛人とよろしくやっていこうという魂胆だった。そんな矢先、なんとバーバラが身代金目的で誘拐されてしまう。警察やマスコミに知らせれば必ず殺すと犯人に告げられると、サムはこれは好都合だと思い、その両方にすぐ連絡した。

■監督を務めた三人はコメディ製作のグループを組んでいて、それぞれの名字の頭文字から“ZAZ”と呼ばれていました。代表作のひとつに『裸の銃(ガン)を持つ男』がありますね。すごく下品なジョークを作るのが得意な人たちで、ジョン・ランディス監督と組んだ『ケンタッキー・フライド・ムービー』や、三人で監督した『フライングハイ』などの初期作品は、ナンセンスが好きな人間にド真ん中の笑いを提供してくれる傑作コメディなんです。

■で、この『殺したい女』はどうなのかといいますと、出来は並くらいです。肝心の脚本がZAZの作ではないということも原因のひとつだとは思いますが、本作、主演のデヴィートとミドラーがちょっと規格外の感じで、なんだか映画に馴染んでいない。おそらくはこの二人の顔と体つきがあれば笑いは確実だろうという目論見だったんでしょうけど、ストーリーも演出もぜんぜん彼らのエキセントリックな個性について行けておらず、ギラギラした演技だけが強烈に出っ張って見えてしまいます。とくにミドラーがしゃかりきになる度に……。

■一方、誘拐犯夫婦のヘレン・スレイターとジャッジ・ラインホルドに目を向けると作品からはみ出さない演技となっておりまして、ここはとても納まりがよいですね。二人を中心に鑑賞するならば、クスクスとした可笑しさや、優しさが点在していてグッド。本作のスレイターはトロい感じでウェイトレスの制服なんかもすごく可愛いし、何度も頬がゆるんでしまいます。ラインホルドの方はオーディオ・ショップの店員役なんですが、客のまだ子供みたいなロック青年に高価でバカでかいスピーカーを買わそうとすすめていたら、青年の奥さんがあとから入ってくるという場面がありましてね。で、その奥さんを見るとお腹が大きく膨らんでいる。そこで彼は「でもじつは、小さくてもオススメできるスピーカーがあっちにあるんだ」と言って、儲けよりも思いやりを優先させてしまうわけなんです。個人的には、本作でいちばん記憶に残るのはギャグよりもこの場面だったりします。ラインホルドは意地悪な顔も似合いますが、こういうお人好しを演じた場合には温かみとかナチュラルなおとぼけ感をとてもうまく出す役者さんでした。

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