『エイリアン』~気色のわるい映像美学

原題:ALIEN

1979年 117分 アメリカ/監督:リドリー・スコット/コンセプト・アート:H.R.ギーガー/出演:シガーニー・ウィーバー/大阪・OS劇場にて鑑賞/引用画像:チラシ(蒐集品)

□航行中の宇宙船に異星生物が入り込む。それは獰猛で弱点がなく、次々と乗組員たちを殺していく。全身が黒く濡れたようにつややかで、頭は怒張した男の陰部にそっくりだった。

■<宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない。>という惹句が二重マル。公開当時、たしかテレビCMでもこのナレーションが流れていました。これ、宇宙空間では助けにきてくれる人なんていませんからねという恐ろしさを、直感としてわからせる名文句だと思います。本作は宇宙の中の鉄の密室という、広所&閉所恐怖症のダブルパンチ。とにかく息苦しいんです。

■ギーガーとスコットが作り出しているイメージは性的で悪意があって、とてもヤな感じですね。たとえば墜落した異星人の船の、女性を思わせる侵入口。エイリアンの頭部。大量にしたたり落ちる粘液。リプリーの口に丸めて突っ込まれる平凡パンチ。女性乗組員の脚の間へそっと忍び寄っていく、上向きの尖った尻尾。などなど。棒状の顎を長く突き出して犠牲者の肉を破るなんてのも、やっぱり異常でして。映像自体は洗練されていますが、性と暴力のグロテスクなイメージでかためられた、正真正銘の悪趣味B級ホラーです。

■クライマックスのパニック演出も上出来です。激しく吹き出すスモークと照明のストロボ、そしてサウンドが三位一体となって、見事な緊迫感を作り出しておりました。本作の効果音にはちょっと奇妙な感覚があったりするので、そこをヘッドホンでじっくり聴きながらの鑑賞なんていうのも結構おもしろいんです。

■乗組員の制服も美術に含まれているというか、見映えするように作ってあるのが二重マルです。とくにウィーバーはブルーのジャンプスーツの下に白シャツ、その中から薄いグリーンのTシャツをのぞかせて色合わせがオシャレ。足元も白のハイカット・スニーカーで、すっきりときまっています。ハリー・ディーン・スタントンはアロハシャツだし、トム・スケリットが手首に巻いた二つ連なったデジタル・ウォッチなんていうのも凝っていて、衣装を眺めていると楽しいんです。『スタートレック』みたいなエリート風コスチュームではなく、皆さんヨレヨレのワークウェアなので、大企業にいいように扱われているしがない労働者感もよく出ておりました。

■公開時、OS劇場の前にはエイリアンの卵の大きなディスプレーがあったと思います。たしか『テンタクルズ』なんかも阪急プラザ劇場の入り口に、タコの足に襲われかけている女性のジオラマ風ディスプレーがあって、しげしげと眺めていた記憶があります。

ビジュアル ★★★★★

陰気くささ ★★★★

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