『ドグラ・マグラ』~本作の前に『カリガリ博士』を観ておきましょう

1988年 109分 日本/監督:松本俊夫/出演:桂枝雀 松田洋治/原作:夢野久作/大阪・サンケイホールにて鑑賞/引用画像:初公開時とリバイバル時のチラシ(蒐集品)

□夢野久作による同名小説の映画化作品で、大正時代の精神病院を舞台にした、ある記憶喪失者の物語。主人公の青年が体験していることは、いま現在の事実なのか、それとも回想なのか、あるいはすべてが夢なのか? それらについての解を示さないまま、不可解な殺人事件と、心理遺伝という学説についての関係が語られていく。

■初公開時、大阪ではサンケイホールでの上映で初日に鑑賞。お客さんの入りは多くもなく、少なくもなく。といった記憶です。舞台挨拶に松本監督がみえて(枝雀さんもいたように思う)、「ドグラ・マグラは学生のときに一度読みかけたんですが、気が向かずに途中でやめてしまったんです。読み通したのは、かなり後になってからでした」と話しておられました。

■そういうことからなのか、映画では原作の取っ付きにくい部分を少しほぐして、くだけた作りにしてある。理屈をくどくど説明するよりも映像の面白みで直感的に理解させようとしており、随分と把握がしやすい。うまく再構築してあるなあと思います。内容は猟奇趣味を交えながら、人間はその細胞の中に先祖の体験を記憶した状態で生まれ落ちる、なんていう怪理論を展開する風変わりなミステリーで、そんな与太話の嘘のうま味がたまりません。ナンセンスに長けていた時代の終わりの、遺品みたいなカルト映画です。

■本作、役者においてはカリガリ博士にそっくりな枝雀さんばかりがクローズアップされているわけでして。いや、その魅力もわかるんですが、でも真ん中の部分でドラマの質を高めているのは松田洋治さんが流す、まるで子供みたいな涙の悲しさだと思うんです。この役者さんはおぼこさとモロさ、そしてどことなく怪しげな、もっと率直な言葉ではうさん臭い雰囲気で、眠り男・呉一郎のキャラクターをしっかりと自分のものにしています。『ドグラ・マグラ』を観るならば、ぜひ松田さんの演技もじっくりみてほしい。役に血が通っております。

■日本映画専門チャンネルにて放送されたハイビジョン版を視聴しましたが、予想に反して画質は良好でした。解像感があって、ちゃんとハイビジョンらしい画。色は枯れたり変色したりで、好意的にとらえるとレトロな趣だといえそうです。黒はべた塗りで暗部が潰れがち。ノイズはあまり気にならないんですが、場面ごとに画質のばらつきがあります。もし特典映像がついた海外盤なんかが出れば迷わず買いますが、それまではこちらの放送ダビング版で充分に満足できます。

原作をうまくまとめている感  ★★★★★

画の面白み          ★★★★★

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